放射性同位体(^<32>P)を用いたオートラジオグラフィーに代わる、安全かつ簡便な遺伝子計測システムとして電気化学をベースにした手法が注目されている。本研究では、DNAと低分子とのコンジュゲート形成に着目し、1)フェロセニルソラレンを用いた二重鎖DNAの酸化還元ラベル化、及び2)酸化還元活性層との積層構造化を図ったDNA修飾電極システムを用いた遺伝子計測について検討した。 ソラレン化合物は核酸塩基と光架橋反応を行うことが知られている。そこで、フェロセニル基を導入した二官能性分子(フェロセニルソラレン)を新たに合成し、その酸化還元特性、及び二重鎖DNAとの結合反応挙動を明らかにした。これをもとに、修飾電極系での酸化還元ラベル化反応について検討した。まず、末端チオール化DNAを用いて修飾電極を調製し、フェロセニルソラレンでの処理と組み合わせ電気化学測定を行った。その結果ソラレン由来の酸化還元波が観測され、本ラベル化法が修飾電極系でも適用可能なことがわかった。さらに、電極表面でのハイブリダイゼーションと組み合わせた場合にも所定の機能を発揮し、遺伝子センサへの応用が可能と考えられた。 一方、電気化学検出のための酸化還元要素の組み込みを目的に、申請者らが過去に検討してきたDNA修飾電極系を酸化還元活性層との積層構造とした電極システムに拡張した。具体的には、単分子膜修飾金電極をベースにフェロセン固定化電極を調製し、さらにその上部に、DNA修飾層を形成させるものである。我々が得た知見は、まず、フェロセン修飾電極に一本鎖DNAを固定化すると酸化還元活性が50%程度に抑制されるというものであった。一方相補鎖とのハイブリダイゼーションはさらなる活性低下(フェロセン単独の場合の10%程度)をもたらし、本修飾電極系がハイブリダイゼーション反応の検出に用い得ることがわかった。
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