OECDや環境庁が定めている、水田除草剤等の生態毒性試験法は生育速度への影響を見る慢性毒性試験で3日間を要する。一方光合成阻害に着目してクロロフィルの蛍光強度や酸素生成速度など急性毒性に着目した検出方法も報告されているが、光合成阻害以外の作用機作を持つものには適用できない。したがって、新しい生態毒性物質の検出法は、急性毒性試験法の迅速性と、慢性毒性試験の信頼性を兼備する必要がある。本研究では、藻類固定化膜を用いて、試料水に浸けるだけで、2つの急性毒性指標(蛍光阻害、酸素生成阻害)と慢性毒性指標(生育阻害)とから、生態毒性物質を、1つのチップで簡単に検出できる、全く新しい概念に基づくバイオセンシング法を構築する。国内外でSelenastrumを用いた農薬の測定に関する報告は多いが、本研究のような、簡易でかつ急性・慢性両指標の測定が一度で出来る方法は全く例がない極めて独創的なものである。 本年度はまず藻類の生育速度への影響が出来るだけ小さい固定化膜材料を探索・検討した。従来バイオセンサやバイオリアクターでの固定化微生物の調製に用いられてきた固定化担体を比較検討したところ、光架橋性ポリビニルアルコール(PVA-SbQ)が最も適当と考えられた。これを用いて藻類固定化膜を調製し、透過率(吸光度)による菌数測定により、通常の液体培養の場合との生育速度を比較したところ、ほぼ同等の生育が確認された。次に水田除草剤を中心とする農薬添加による藻類の生育速度阻害効果を、固定化藻類と懸濁培養している藻類とで比較した。その結果、トリアジン系のアトラジン、シメトリンでは懸濁液と同等の結果が得られたのに対し、シマジンや、酸アミド系のメフェナセット、プレチラクロール、ジニトロアニリン系のペンディメタリンでは検出感度は著しく低下した。その原因を現在検討しているところである。
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