OECDや環境庁が定めている、水田除草剤の生態毒性試験は生育速度への影響を見る慢性毒性試験で3日間を要する。また多大な設備、スペース、人手を要するという問題もある。 本研究では、藻類固定化膜を用いて、試料水につけるだけで、2つの急性毒性指標(蛍光阻害、酸素生成阻害)と慢性毒性指標(生育阻害)とから、生態毒性物質を、1つのチップで簡単に検出できる、全く新しい概念のバイオセンシング法の創生を究極の目的として、その実現に向けた基礎的検討を行った.具体的には、1)緑藻の固定化法の検討、2)固定化緑藻による慢性毒性試験、3)緑藻の凍結保存方法に関する検討、4)農薬添加に伴う緑藻の蛍光阻害及び酸素生成阻害の定量的評価、5)固定化緑藻による急性毒性試験、について研究を行った。昨年度は1)2)について、本年度は3)〜5)について検討した。 マイクロプレートスケールの実験で、5%ジメチルスルホキシドを添加して凍結した場合、解凍後、凍結していないものとほぼ同等の生長を示した。また凍結保存した緑藻を用いて水田除草剤の慢性毒性試験を行ったところ、多くの農薬で、凍結を行っていない藻を用いた場合に比べ、より高感度な検出が可能となった。 次に種々の除草剤添加時の緑藻の、クロロフィル由来の蛍光強度変化と酸素生成速度変化を調べた。その結果、10ppm以下でこれらの指標に変化が見られたのはトリアジン系の除草剤のみで、いずれも蛍光の増大、酸素生成の減少が観察された。検出感度はいずれも10ppbと高感度で、測定時間は蛍光が15分、酸素が40分と大幅な迅速化が可能となった。 以上の成果を元に、緑藻固定化膜を酸素電極先端に装着し、トリアジン系農薬の迅速測定を試みた。藻懸濁液を用いた場合と同等の高い感度が得られ、水田農薬の迅速検知のためのバイオセンシングチップ実現の可能性が強く示唆される結果となった。
|