本年度はシリカガラス表面に温度感応性高分子であるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)[PNIPAAm]を修飾する方法の確立とPNIPAAmによって修飾されたガラスの濡れ特性の検討を行った。PNIPAAmをガラス表面に修飾するために、シランカップリング剤処理によって官能基を導入し、そこにPNIPAAmを結合させることを試みた。ガラス表面にアミノプロピルシランをカップリングさせてアミノ基を導入し、末端にカルボキシル基を導入したPNIPAAmを結合させたところ、表面のアミノ基と高分子末端のカルボキシル基とが反応する速度が遅く、24時間反応を行っても作成した表面の濡れは改善されなかった。それに対して、末端にチオール基を持つカップリング剤を導入した後、その場で重合反応を行わせると、チオール基を起点にして重合が進行し、表面以外の溶液中においても重合感応が進行するものの、表面へのPNIPAAm導入量は前者に比べて多く、濡れのよい表面を作成することができた。さらに表面の濡れは温度30℃付近で変化させることができた。しかし、修飾されたガラス表面が水の流れを確実に止めると考えられるほど水を大きくはじく程度には至らなかった。温度変化による水の接触角の変化(濡れ制御)をさらに大きくするための反応条件や修飾剤種類の検討及びマイクロパターンニング技術などの導入が必要と考えられた。
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