本年度は、キャピラリー電気泳動-化学発光検出器を用いて主に環境ホルモン(フェノール類)の分離・検出を検討した。化学発光検出セルには、簡易化と高感度化を目的として作成された光ファイバーを有するバッチ型化学発光検出器およびさらなる簡易化を目的として作成されたガラス瓶型化学発光検出器の2つを用いた。 ダンシル化フェノール類を過シュウ酸エステル化学発光系により検出した。テトラブチルアンモニウムブロミドを相間触媒として用い、フェノール類のダンシル化を試みたところ、室温にて3分以内に標識することができた。しかし、ニトロ基を2つ以上持つグループではニトロ基が持つ電子吸引性のために、標識率は非常に低いものであった。ダンシル化フェノール類の検出限界(S/N=3)は、光ファイバー型検出セルにおいて1x10^<-6>-4x10^<-6>M(7-27fmol)、ガラス瓶型検出セルにおいて2x10^<-7>-5x10^<-7>M(1.1-5.8fmol)であった。光フアイバー型検出セルにおける直線定量範囲は10^3以上であり、ニトロ、クロロフェノール類6種の各試料の相関係数は0.990-0.999であった。ガラス瓶型検出セルにおいても直線定量範囲は10^3以上であり、相関係数は0.994-0.999であった。各試料の発光強度に対する相対標準備差は、ガラス瓶型検出セルのほうが優れており、相関係数の良好にも通じている。また、泳動溶液に添加剤としてSDSを加えることにより、16種の混合試料を分離・検出することができた。しかし、この場合試料によっては発光強度の減少を招き、検出時間も長くなった。この改善として、泳動溶液にアセトニトリル及び低濃度のSDSを添加することにより、発光強度の減少なく分離・検出することができた。
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