本研究は力学場に含められる超音波場による電極反応(駆動エネルギーは電気化学エネルギー)の制御効果について、その本質的原理を解明しようとするものである。さらに、本研究では多様な効果の各々について、それらの発現反応、発現条件、発現効果などを綿密かつ系統的に追究し、とくに電極反応における超音波利用のため基盤となる指針を獲得しようとするものである。 11年度は、電極反応における超音波利用のため基盤となる指針獲得を目指し、まず多様な効果の各々について、それらの発現原理と機構の解明を実施するとともに、超音波の周波数、振幅、および出力といった超音波効果の影響因子を綿密かつ系統的に追究した。また、予備研究において確認された反応の効率化と反応(生成物)選択性の制御効果を広範な型の電極反応において実証した。さらに超音波源、電極の配置といった超音波電解装置の構成要素の幾何学的配置などについて綿密に検討を行い、実用的電解プロセス化のための知見を獲得した。 12年度は前年度の研究成果に基づき超音波の合目的的利用の可能性を追求することに主眼をおいた。そこでまず、超音波効果による電極反応生成物の立体化学制御の可能性を探索したところ、カルボニル化合物の還元二量体(ジオール)の立体選択性やvic-ジハライドの還元脱ハロ体(オレフィン)の立体特異性が超音波照射により制御できることが実証された。また、超音波効果を利用することで電解酸化重合による機能性高分子薄膜の形態制御が達成されるとともに重合膜の高均質化、高密度化、高耐久性化も実現きれた。
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