安定化ジルコニア(YSZ)などの酸化物イオン導電性固体電解質を用いる固体酸化物燃料電池(SOFC)は、原理的に総合変換効率が最も高い。しかし、現在開発中のものは約1000℃という高温運転のため、材料の劣化が避けられず材料選択も制限される。もし、800℃程度の低温作動が可能となれば、これらの問題も解決され実用化に拍車がかかる。SOFCの低温作動化には、2つの重要課題がある。1つは固体電解質の薄膜化あるいは高イオン導電性電解質の開発によるオーム抵抗の低減であり、もう1つは分極ロスが小さな高性能電極の開発である。申請者らは、電子-イオン混合導電体微粒子の焼結多孔体上に微量の貴金属微粒子触媒を高分散担持した新しい電極構造を提案した。これにより、800℃でも1000℃なみの高性能が得られることを実証することができた。 本研究は、この新型電極の性能ならびに信頼性を実用レベルにまで発展させ、高性能な低温作動SOFCの実現に貢献することを目的とする。 11年度は、これまでの性能を遙かに越える高性能カソード(酸素極)の開発に成功した。カソード材として優れた混合導電体であるLa(Sr)CoO_3(LSC)を、YSZとの固相反応を抑制するためにセリア系薄膜を中間層として用いた。そして、表面にnmサイズのPt触媒を極微量担持することにより、800℃で酸化剤に空気を用いても、わずか50mVの分極損失で1A/cm^2もの高出力電流が得られた。 12年度は、高性能アノードの開発に成功した。アノード材として高い電子導電性とイオン導電性を併せ持つイットリアドープセリアYDCを用い、微細構造を制御することにより高性能化できた。そして、表面にnmサイズのRu触媒を極微量担持することにより、800℃水素中100mVの分極損失で0.4A/cm^2の高出力電流が得られた。
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