n型半導体化した酸化チタン電極を硫酸水溶液に浸し、アノード分極下で光照射すると光生成された正孔による水の酸化によって酸素発生が起こるが、それと競争的に酸化チタン自身の溶解反応が結晶構造のc-軸に沿って選択的に進行し、断面が一辺数十ナノメートルの正方形で、側壁が(100)面からなる特徴的な形態を持つエッチングパターン(ナノハニカム構造)が形成されることをみいだし、その詳しい構造解析を行った。 平成11年度には、そのエッチピット径を電極のキャリア密度を変えることにより制御できること、また、エッチング時の電極電位を制御することにより粒界部に特徴的なエッチングサイト選択性が現れることを報告した。 平成12年度においては、形成されたナノハニカム酸化チタン表面構造について、透過電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などを用いて、さらに詳しい微細構造観察を行った。その結果、この表面が高結晶性かつ大比表面積を持つというユニークな構造をもつということを明らかにした。また、そのような表面への金属微粒子修飾を行い、その構造および電極特性への効果について検討した。さらに、エッチング量を増大させると、ナノハニカム構造を形成している側壁の溶解が進行し、太さ数十ナノメートル、長さ数マイクロメートルの棒状試片(ナノロッド)からなる興味深い構造が得られることを見出し、その微細構造についても検討を行った。その結果、この棒状試片の長軸は、ルチル型酸化チタンのc-軸と一致し、ナノハニカム構造と同様、高い結晶性を持つことがわかった。
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