2-ヒドロキシピリミジン誘導体1をCH_3I、(CH_3)_2SO_4、TMSiCHN_22などでメチル化した場合は通常の条件下ではO-Me体(4)とN-メチル体が得られる。我々は2とDAST3を処理することで、5℃、1分で反応が完結し、かつ選択的にO-メチル体が得られる条件を見い出した。この反応においてDASTがO-メチル化にどのように関与しているか、MO計算を用いて理論的解析を行った。 1の1位もしくは3位に付加しているH^+をジアゾメタンが引き抜きながら、メチル化が進行する機構である。ジクロロメタン中で、この時の活性化エネルギーは、O-メチル化とN-メチル化でそれぞれ15.8、11.1kcal mol^<-1>と計算された。次に、DASTとアルコール性水酸基と反応における中間体を経由する機構を想定した。2つの反応物が考えられるが、O-メチル体、N-メチル体の活性化エネルギーは69.4、71.9kcal mol^<-1>と高いエネルギーを必要で、DASTを用いるメチル化は、低温条件下で反応が進行する実験事実と反する。実験では禁水条件下では反応が進行しないこと、及びDASTの水に対する高い反応性を考慮すると、最初にDASTとH_22Oが反応し付加体6が生成し、さらにジアゾメタンとの反応でジアゾニウム中間体を生成の後、メタンジアゾニウム中間体と1が反応しO-メチル体、N-メチルが生成する反応の活性化エネルギーは、2の場合は2.2、4.1kcal mol^<-1>と計算された。この結果は0℃で迅速に反応が進行することを支持しており、2ではO-メチル体が優先して生成することを示している。ジアゾメタンの場合、反応する分子間で立体反発が考えられないため、反応性の高いNと反応ずるし、一方2の場合、トリメチルシリル基が反応部位に影響を及ぼすため、O-メチル化が優先的に進行すると考えられる。
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