研究概要 |
研究は予定通り3年間にわたり、順調に進んだ。特に、懸案であった触媒活性を決定する因子を解明でき、今後の研究指針を得た。ナノサイズ酸化チタンの作成法については、すでに提案しているゾル・ゲル法を活用している。カソードバイアス下での電着によってナノサイズ粒径の触媒をマクロエレクトロードとして作成できることを確立した。これまで、ナノサイズ触媒のマクロエレクトロード化は、導電性ガラス(ITO膜)を基板とするものであったので、500℃以上の焼成は不可能であった。その結果、アナターゼとルチルの混晶化が出来ず、アナターゼ80%、ルチル20%の組成を持つ市販のP25が何故触媒活性が高いか不明であった。チタン金属箔を基板とすることで、1000℃以上までの熱処理が可能となったので、アナターゼとルチルの混晶化が可能になった。アナターゼサイドで光生成されたホールが、酸化反応で消費されると、電子が残り、そのセルフバイアス作用で、触媒作用の基本となるバンドの曲りを無くしてしまい、ホールの生成を阻害して触媒作用を失活させる。触媒の作用を持続させるには、如何に早く電子を除去するかが焦点となる。そこで、ルチルを犠牲アノードとし、触媒活性の高いアナターゼサイトで発生した電子をルチルサイトに注入させ、その表面でホールと再結合させることで、アナターゼのバンドの曲りを維持することが、効果的であることが判明した。これにはエレクトロルミネセンスの発光強度と熱処理温度の関係から判明したものである。 この考えを他の系で確認するため、SnO_2とTiO_2のパターンニング化を行って、前者を犠牲アノードとすることで、すぐれた触媒活性が得られ,成果を公刊した。
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