本研究では2本鎖DNAのインディケータとして、可逆的に酸化還元可能なインターカレータを用いることを試みた。まず種々のフェナントロリン金属錯体について検討した。マンガン、ニッケル、銅、銀、コバルトのフェナントロリン錯体を調製し、その電気化学特性を調べた。その中から比較的酸化電位の低かったフェナントロリンコバルト錯体を用い、ターゲットDNAの測定を行った。末端をチオール修飾した1本鎖プローブDNAを金電極表面に固定化し、ターゲットDNAをハイブリダイズさせ、フェナントロリンコバルト錯体を作用させたところ、ターゲットDNA濃度に依存したフェナントロリンコバルト錯体の電流応答が得られた。非相補的なDNAを作用させても電流応答に変化がなかったことから、電極表面に形成された2本鎖DNAにフェナントロインコバルト錯体が選択的に結合していると思われる。さらに本研究ではフェナントロリンコバルト錯体の電流応答を酵素反応と組み合わせることで増幅させ、高感度化を試みる。酵素としてフルクトースデヒドロゲナーゼ(FDH)を用いた。まずフェナントロリンコバルト錯体とFDH間で電子移動が可能であるかを確認しておく必要があるため、検討を行った。フェナントロリンコバルト錯体とFDHを含む緩衝液にフルクトースを順次添付していくと、フェナントロリンコバルト錯体の電流応答が増加した。これはFDHのフルクトース酸化反応によって補酵素PQQが還元型となり、還元型PQQからフェナントロリンコバルト錯体に電子移動が行われたためと思われる。これによりフェナントロリンコバルト錯体とFDH間での電子移動が確認できた。今後、酵素反応を組み合わせたDNA測定を行う予定である。
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