以下の二つの反応系で、ダイヤモンド以上の高硬度を有すると予測される窒化炭素の合成を検討し、熱処理による構造の変化を調ベ、新しい知見を得た。 塩化シアヌルと窒化リチウムの固気反応によって得られた生成物にはナノメータサイズのかご状の粒子とチューブが含まれていた。当該予算で購入したATRカセグレン鏡(Ge結晶)を用いた赤外分光(FTIR)測定および光電子分光法(XPS)による観察では、熱処理によって炭素-窒素単結合の部分が少なくなり共役二重結合の部分が増加することが判明した。硬度測定の結果では、550℃まで熱処理してもモース硬さ7の水晶に傷を付けるほどの硬度を有することがわかった。 一方、四塩化炭素とアンモニアの気相反応によって得られた生成物は、その結晶性は低いものの三次元に広がった構造を有し均質であることがX線回折、FTIR、光電子分光法(XPS)および電子顕微鏡観察などからわかった。また、この生成物は熱処理温度400〜450℃で、三次元構造から二次元層状構造へ大きく構造が変化することも判明した。硬度測定の結果、熱処理をしていない物質のみが水晶を研磨できるほどの硬度を有することが分かった。 これら二つの反応系で得られた生成物は、いずれも紫外線励起で可視領域に発光を示し、熱処理によってその最大発光ピークが長波長側にシフトした。今後、熱処理温度と硬度および発光との関連を詳しく調ベ、合成および熱処理条件の最適化を図る。
|