筆者らは、すでに微少領域直線補間法という方法で多次元ファクト・データベースから物性予測をする方法を開発している。ただこの方法は、微少領域という前提があるので、ファクトデータから大きく離れた座標の物性値を予測する場合は、誤差が大きくなるという欠点がある。これをいかにして克服するかが差し当たりの課題である。本年度は、スプライン補間法を用いる方法を試みた。スプライン補間の場合は、一定の連続曲線に沿った物性変化をしている場合は、直線補間と比し、かなり良い精度での補間が期待できる。ただスプライン補間を行うためには、多次元空間をそれぞれの軸に沿ったメッシュを構成する必要がある。すなわちメッシュの交差点のデータが求まっている必要がある。実際のファクトデータは、必ずしもこれを満たさないので、メッシュの交差点の近傍にファクトデータが存在する場合は、微少空間直線補間法でその交差点の物性値を求め、メッシュを構成した。メッシュの中間の座標の物性予測値は、スプライン補間を用いて計算する。このようにして約20種の多成分系の熱膨張係数とガラス転移温度を計算したところ、微少直線補間法のみを用いた場合より、10〜25%精度が向上した。特にデータ密度が低い領域において、精度の向上が著しかった。 ただこの方法の欠点は、ファクトデータ集合の外側の座標の物性値を予測することができないことである。これは、ある程度の補外も可能な補間法を用いることにより克服できると考えられるので、来年度はこうした方法で、さらに精度を上げることを試みる予定である。
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