本研究の目的は、多次元ファクト・データベースが存在する場合に、データが存在しない組成の物性地を存在するデータから近似的に求める手法の開発である。1次元の系に関しては、補間法で簡単に求めることできる。しかし2次元以上の系に対して一般的な解はない。筆者らは微小領域直線補間法を開発して、多次元の系に対する任意の組成の予測値を求めることに成功した。微小領域直線補間法は、データが均一に分布している場合は、極めて良好な結果を与えるが、データの分布に偏りがある場合、分布の粗な部分での精度が低下する。これは、直線補間を用いているせいである。これを改良して、さまざまな系に適用できるように、改良することが本研究の目的である。 1年目の平成11年度は、データが粗な領域の予測を改善することを試みた。これを実現するには、データが粗な領域を均質なデータの分布域に変換することである。実際にはデータはないので、擬似的なデータを分布させることで解決した。すなわちスプライン補間法を用いることにより擬似的なデータを生成し、それによって微小頷域直線補間法の近似を向上させ、予測値の精度の向上させることができた。 2年目の平成12年度は、データが存在する領域の外側の領域に対する予測を試みた。当然ながらデータが存在する領域から大きく離れた部分は、補外によっても予測はできない。あくまでもデータ領域の近傍の周辺部分である。スプライン補間法は、補外には用いることができないので、Lagrange法を用いた。ファクトデータからある領域のデータを削除し、その部分を補外によって予測し、実際のデータとどの程度一致するかを見ることとした。その結果、データ領域の平均サイズ(予測の計算に用いることができるデータの組成幅で表す)の10%以内にあるデータであれば、平均3%程度の誤差で予測が可能である。データを20%外まで広げると、平均7%程度の誤差となる。 以上の研究は、3成分ガラスの熱膨張計数、ガラス転移温度などのデータを用いて行ったが、この方法は、連続的に変化するいかなる物性にも応用可能であり、また更に高次の多成分系にも適用可能である。
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