研究概要 |
(ジアルキルアミノ)チアゾールダイマーは非常に強い電子供与性を示すことから色素の材料として大変興味深い化合物である。本研究では、この(ジアルキルアミノ)チアゾールダイマーから誘導されるアゾ色素とインダミン色素の合成、構造、および紫外可視吸収スペクトルについて検討した。 アゾ色素は、アリールアミン類をジアゾ化し、(ジアルキルアミノ)チアゾールダイマーをカップリング成分とすることで中程度の収率で合成することができた。得られたアゾ色素は、1)第一吸収帯は568-737(ε=24000-88000)第二吸収帯は404-475(ε=9200-52000)nmに観察され、2)ビチアゾリル部位は平面で、アゾ基を介したフェニル基との二面体角は8.5°で、分子全体としてもほぼ平面であり、3)4-(ペルフルオロアルキルスルホニル)フェニル基や2,4-ジニトロフェニル基等の非常に強い電子求引性のジアゾ成分を有する誘導体は負のソルバトクロミズムを示すことを見い出した。 インダミン色素は、アリールニトロソ誘導体と(ジアルキルアミノ)チアゾールダイマーを金属塩の存在下で反応させることで中から低収率で合成することができた。金属塩としては、ニッケル(II)テトラフルオロボレートが最適であった。これらのインダミン色素は、1)第一吸収帯は、648-725nm(ε=3900-55000)、2)アリールアミノ部位での置換基効果から、インダミン色素で知られている交互炭素系発色ではなく、分子内電荷移動発色であること、3)ビチアゾリル部位とアリールアミノ部位との二面体角が大きくなると、第一吸収波長は長波長域にシフトすること、4)その理由は二面体角のねじれとともに、LUMOが安定化しHOMOが不安定化するためであること、を見出した。 以上の知見は、いずれもこれまでの色素の常識を覆す現象であり、(ジアルキルアミノ)チアゾールダイマーという特異な基質を用いることで発見することができた。また、いずれの色素も近赤外領域に強い吸収を示した。
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