研究概要 |
均一系では相互に反応する試薬でも、それぞれの試薬を別々の多孔質無機固体に担持すれば、試薬の大部分は細孔内に存在するので試薬の接触は避けられ、同一容器内で共存できるとの仮定のもとに、複数の担持試薬を用いたワンポットでの2段階反応について検討した。2-アミノチアゾールは、α-ハロケトンとKSCNからチオシアナートを合成し、ついでチオシアナートとアミンを反応させると得られる。担持試薬を利用して、この2段階合成をワンポットで行った。KSCN、アミン塩とα-ブロモケトンをベンゼン中で50〜80℃,6h撹拌してもアミノチアゾールは全く得られない。ところが、KSCNをシリカゲルに担持し、アミンはその酢酸塩をアルミナに担持して、同様条件下で反応を行うと対応する2-アミノチアゾールが高収率で得られた。 【chemical formula】 ブロモケトンの代わりにクロロケトンを用いても十分反応は進行した。アミンとしては脂肪族1級、2級および芳香族アミンを用いることができ、対応するチアゾールが得られた。芳香族アミンは酢酸と塩を形成し難いので、塩酸塩を用いた。本法の利点は種々のハロケトンやアミンの入手が容易なので2-アミノチアゾール類のライブラリーの構築が容易であり、また、生成物の単離が簡単なことである。無機固体に担持したKSCNやアミン塩は反応溶液に溶出しないので、反応後、ろ過という簡単な操作で生成物と分離できる。KSCNとアミンは均一系内では反応してしまうが、無機固体に担持することで相互の接触を防ぎ、同一容器内に共存させることができることが分かった。均一系では不可能な多段階反応が、無機固体担持試薬を利用するとワンポットで可能であることを明らかにした。
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