研究概要 |
1.触媒量の3価鉄塩存在下にアルキルマンガンアート反応剤のアルキル基のホモプロパルギルエーテル類への付加反応が起こることを見つけた.反応は非常に高い位置及び立体選択性を伴って進行し,異性体を副生することなく3置換アルケン類が得られる.また,本反応はアルキル化剤としてマンガンアート反応剤だけではなく,Grignard反応剤,亜鉛アート反応剤やアルキルリチウムを用いても進行することも判明した.本反応を塩化アンモニウム水溶液で停止することなく続けて求電子剤を加えることにより,さらなる炭素-炭素結合形成も可能であり,オレフィン部の立体化学を損なうことはなく,対応する4置換オレフィンを得ることに成功した.これらのカルボメタル化反応では鉄塩が触媒的作用をしているものと考えられ,その作用に関しては現在も検討中であるが,アルキルリチウムの付加反応では,鉄塩に対して過剰のリチウム反応剤を用いた場合にのみ収率良く炭素リチウム化反応が進行するため,本反応では低原子価鉄のアート型活性種が関わっているものと考えられる. 2.マンガン化合物は比較的安価であり,容易に入手可能な化合物である.このため主に高酸化状態のマンガン化合物を用いた酸化反応が,広く有機合成化学に用いられてきた.これに対し低原子価マンガンの利用は,その大部分がマンガン(0)カルボニル錯体を用いた反応に限られており,2価マンガン塩の反応,特にそのLewis酸性に着目した反応はほとんど知られていない.そこで2価マンガン塩のLewis酸性を用いた特徴的な反応を見い出すべく研究を行ったところ,4-ペンチン-1-オール類のアルコキシドに1当量の2価マンガン塩を作用させると位置選択的な分子内環化反応が進行し,これをアルコール/酸で処理することで環状アセタール化合物が効率良く得られることを見つけた.
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