研究概要 |
1三方向ペプチド性トリヒドロキサム酸の金属イオン錯体化による構造制御 H-(Ala)n-b-(HO)Ala-Ala-β-(HO)Ala(n=1or2)ユニットがニトリロ三酢酸から3方向ヘ伸長したトリヒドロキサム酸ダイトピック配位子を合成した。これらの配位子は鉄(III)と錯体化し定まった固有の構造をとることを明らかにした。また、2つの鉄(III)の接近効果は鉄(III)錯体のCDの測定、およびEDTAによる鉄除去反応で明らかなった。これらは金属イオンによる協同効果や調節効果を示すもので、ペプチド全体の構造を左右する。 2酵素類似機能物質の合成と機能の評価 (1)オルニチンを起点分子に用い、2つのN末端にヒスチジン残基を導入した三方向性トリヒドロキサム酸(2H-OH)を合成した。C端アミノ酸残基の触媒効果に及ぼす影響について検討するため、2H-OHのC末端をメチルエステル化したものやリン酸エステルと静電的に相互作用可能なリジンおよびアルギニン残基を結合した化合物を合成した。いずれも、鉄(III)と安定な6配位8面体型の錯体を形成し、ペプチド末端の2つのイミダゾール基が特定の空間に配置されることを明らかにした。 (2)触媒基であるイミダゾール基の近傍に基質取り込み部位を作るため、フェニルアラニンを導入した成分ペプチド,Boc-Ala-Lys-Phe-Ala-His-Ala-Ala-β-(HO)Ala-NHMe,をN端側からニトリロ三酢酸に結合した三方向ペプチド性トリヒドロキサム酸を合成し、現在、化合物の精製を行なっている。 2-(1)で得られた化合物の鉄錯体は、空間的に集約した2つのイミダゾール基によってUpU(Uridylyl-3′,5′-uridine)の加水分解を触媒し、反応速度を加速することを明らかにした。反応速度のpH依存性はリボヌクレアーゼアと似たベル型となった。
|