フッ素化と同時に不斉を発現させる不斉フッ素化は医薬、農薬、機能性材料の開発上、極めて有用である。本研究はこれまで未開拓であった電解不斉フッ素化法を新たに開拓しようとしたものであり、本年度は分子内に不斉補助基を有するスルフィド類の電解不斉フッ素化法の開拓を行い、初期の目的をほぼ達成できた。 Evansの不斉補助基を有するα-フェニルチオ酢酸エステルのジアステレオ選択的電解フッ素化に成功した。ジアステレオ選択性は不斉補助基のみならず溶媒や電解温度、さらには陽極材料などの電解条件に強く依存することが分かった。低温下、超音波照射下で電解フッ素化を行うと収率、ジアステレオ選択性ともに良好な結果が得られることを見いだした。フッ素化されたジアステレオマーはそれぞれ用意に分離でき、光学活性体を純品として得ることに成功した。
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