研究概要 |
ラジカル反応の立体制御研究の一環として本年度はStevens転位のエナンチオ制御,および新規な[1,4]-転位開発について検討した。Stevens転位は4級アンモニウム塩系のラジカル型1,2-アルキル転位であり,アルコキシド等の塩基によって進行することが知られている。この反応は古典的反応であるがそのエナンチオ制御はこれまで報告例がなかった。今回,塩基として光学活性アミノアルコールを用いることで初めて光学活性な転位体を得ることに成功した。さらに塩基としてグルコース由来のキラルアルコキシドを用いることで,より効率的なエナンチオ制御に成功した。一方、ラジカル機構で進行する事が知られている[1,2]-Wittig転位について,転位末端の構造必要用件を種々検討した。その結果,ビニルエチニルカルビノール由来の転位末端を用いると[1,2]-Wittig転位体はほとんど得られず,主として[1,4]-転位体であるケトンが得られることを見出した。さらにまた,系中で生成しているケトンエノラートをアルデヒドで捕捉することで連続的[1,4]-転位体・アルドール反応を行い,2つの炭素-炭素結合を一挙に形成することにも成功した。
|