研究概要 |
セスキテルペンの全合成を行うに当たって、不斉導入が不可欠な作業となる。即ち、これまで開発してきた高立体選択的連続的Michael-Intramolecular Wittig反応を不斉合成にまで発展させる必要があるこれまでに、α,β-不飽和エステルと5員環ホスホニウムイリドとの反応は、立体選択的に連続的Michael-Wittig reactionの様式で進行し、シクロへプタノン骨格が1ポットで合成できる事を報告してきたが、今回、8-フェニルメンチル基を不斉補助基とする不飽和エステルを用いて不斉シクロヘプタノンの合成を検討した。ジアステレオ選択性は、先ずアキラルなエノエートの反応によりb-置換基の異なるシクロヘプタノンを合成し、得られたシクロへプタノン誘導体を(R,R)-2.3-ブタンジオールでケタール化し、^<31>P-NMR測定を行った。その結果、いずれの場合もその面積比が1:1で対応するジアステレオーマーのシグナルが観測され^<31>P-NMRよりジアステレオ選択性が算出できることを確認した。次に不飽和エステルに8-フェニルメンチルエノエートを用いて反応を行った。その結果、エノエートのβ-置換基がメチル、i-プロピル、n-ペンチルの場合は26〜46%deと若干の選択性が見られたたが、β-置換記がフェニル基の場合、88%deと比較的良い選択性を示した。さらに、得られたシクロヘプタノンケタールの単結晶の作成に成功した。X-線結晶構造解析により、主生成物の絶対配置は(3S,4R)-3-フェニル-4-ジフェニルホスフィノイルシクロヘプタノンであると決定した。これらの結果は、J.Org.Chem.に掲載された。 更に、含窒素複素環を分子内に含むテルペン類合成の基礎反応として、環状アザイリドを合成し、種々の反応を行った。環状イミノホスホランとβ-ジケトン誘導体との反応では、活性メチレン基を有するこれら基質とでも環状イミノホスホランは失活することなくaza-Wittig反応が進行し、良好な収率で対応するエノン誘導体を与えることを明らかとした。更に、得られたホスフィンオキシド誘導体とベンズアルデヒドとのHorner-Wittig反応ではアルコール誘導体をerythro選択的に得ることに成功し、引き続く水素化ナトリウムとの処理によりZ-オレフィンを選択的に得ることに成功した。また、環状イミノホスホランと種々のチオエステル誘導体との反応について検討した。安息香酸及びケイ皮酸チオエステルの場合では、当初予想していた一般的なaza-Wittig反応とは異なり窒素原子上がアシル化された生成物を得た。
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