研究概要 |
1.均一系遷移金属錯体による複素芳香環化合物の水素化 本研究を開始するにあたり、複素芳香環化合物の水素化に対し触媒活性を示す遷移金属錯体はほとんど知られていなかったので、その探索を行った。まず始めに、インドールの水素化に対し、将来の触媒的不斉反応への展開を考慮し、不斉修飾が容易なリン化合物を配位子として持つ金属錯体の触媒活性について検討したところ、ロジウム錯体(RhCl(PPh_3)_3)が高圧下において低いながらも触媒活性を示すことが判明した。さらに、詳細にロジウム原子上の配位子について検討したところ、(アセチルアセトナト)(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)と2当量のトリフェニルホスフィンから系中で調製される錯体が高い触媒活性示し、1/1000当量の触媒、20時間で92%のインドリンを与えることがわかった。本触媒は2位に置換基を持つ不斉点を与える基質に対しても有効であり、高い触媒活性で2置換インドリンを高選択的に与えた。 また、本ロジウム錯体はインドールだけでなくピロール、フランといったその他の5員環複素芳香環化合物の水素化にも高い触媒活性を示した。 2.2-置換インドールの触媒的不斉水素化 上記の結果を基に2-置換インドールの不斉水素化について検討した。まず、(アセチルアセトナト)(1,5-シクロオクタジエン)ロジウム(I)と種々の光学活性ビスホスフィン配位子から系中で調製される錯体を触媒として2-ブチルインドールの触媒的不斉水素化を行ったところ、遷移金属に対しトランスでキレート配位する不斉配位子PhTRAPが最も良好な結果を示し、85%eeの立体選択性で光学活性インドリンを与えた。
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