1.塩基触媒によるヨウ化アルキンの新規環化異性化反応:ヨウ化アルキンを触媒量のリチウムジイソプロピルアミドと処理することでヨードメチレンシクロアルカンが効率的に生成する新規な環化異性化反応が進行することを見いだした。本反応は、対応するアルキニルリチウム中間体の環化反応により生じたシクロアルキリデンカルベノイドが、系中で原料分子によりプロトン化される機構で進行する。有機ヨウ素化合物は、炭素・炭素結合形成反応に広く用いられる高い反応性を持つ炭素求電子剤である。これらの反応においてヨウ素原子は、炭素炭素結合形成と同時に塩を形成して脱離するため、生成物中にヨウ素原子が取りこまれることはない。本反応は、反応性に富んだヨウ素原子を保持した生成物を与える、これまでに例のない環化異性化反応である。 2.アルキニルメタル化合物と求電子剤の反応によるカルベノイドの発生:前年度までの研究から、分子内に脱離基を有するアルキニルメタル化合物がβ位で円滑な環化反応を起こし、シクロアルキリデンカルベノイドが発生することが明かとなった。このような反応性が分子内反応に限定されるものか否かを調べる目的から、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、等々の多様なアルキニルメタル化合物とアルキルハライドの分子間反応を検討した。様々な反応条件を調べたが、いずれの場合も、α炭素上でのカップリング反応が優先的に進行するのみで、β炭素上での反応性を示す結果は得られなかった。
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