研究概要 |
1 トリス(トリメチルシリル)シランカルボン酸エステル、(Me_3Si)_3SiCO_2R(R=t-Bu,Ad,benzyl)に当量のトリス(トリメチルシリル)シリルリチウムを反応させると、トリメチルシリル基の一つが引き抜かれて、リチウムアルコキシビス(トリメチルシリル)シレノラート((Me_3Si)_2LiSiCO_2R、1)がほぼ定量的に生成することを明らかにした。1は、金属エステルエノラートのケイ素等価体として初めて合成に成功したものであり、有機合成化学における金属エステルエノラートの有用性を考えれば、そのケイ素化学における可能性の大きさは、容易に理解できる。 1は、立体的に大きなアルコキシ基を有する場合には、低温で安定でありNMRで生成を確認でき、アニオン電荷は大きくケイ素上に分布していることが分かった。また、1は、ハロゲン化アルキル、クロロシラン類と反応してケイ素上の置換生成物を高収率で与え、アルデヒドとの反応からはカルボニル基への付加から進行した反応生成物が得られた。さらに、塩化パラジウムとの反応からは、酸化カップリング生成物であるジシランジカルボン酸エステルが得られた。これは、2つのエステル基がケイ素鎖で架橋された初めての化合物である。 2 アシルトリス(トリメチルシリル)シランとトリス(トリメチルシリル)シリルリチウムから合成できるリチウムシレノラート((Me_3Si)_2LiSiCOR)と、酸クロリドを反応させると、用いる酸クロリドの量に依存してビスアシルシラン、(Me_3Si)_2Si(COR)_2またはテトラアシルシラン(RCO)_4Si。複数のアシル基が置換したケイ素原子を含む初めての化合物である。テトラアシルシランは、特に14族原子に4つのアシル基が置換した初めての例である。さらに、ビスアシルシランの反応性についても検討した。
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