研究概要 |
すでに前年度までにおいて、多糖水解酵素の相補性(加水分解+糖転移)を基盤とするグリコケミストリーサイクルという新しい概念を提案した。本年度は、この考え方に沿った多糖合成研究の一貫として、代表的ヘミセルロースであるグルコマンナンの人工合成を試みた。 グルコマンナンはコンニャクイモ、ラン科やユリ科などの根茎、針葉樹などの二次壁ヘミセルロースとして存在する。グルコースとマンノースがβ1,4結合でグリコシド結合した多糖であり、食物繊維としての難消化性、コレステロール上昇抑制効果、血糖低下作用などの生理活性を持つことが知られている。今回フッ化マンノピラノシルβ1-4グルコピラノシルを設計・合成し、それをエンドβ1-4グルカナーゼにより重縮合させることにより、グルコースとマンノースを交互に有するハイブリッド型グルコマンナンを試験管内で合成することを試みた。 まず2'位にのみに遊離の水酸基を有するセロビオース誘導体を合成した。引き続き非還元末端2'位の酸化、還元によりβ-マンノシド構造を有する二糖を得た。以下、定法によりアノマー位にフッ素原子を導入することにより、モノマーを合成した。生成モノマーの重縮合反応は、アセトニトリル-酢酸緩衝液混合溶媒中、モノマーに対し市販のセルラーゼを作用させることにより行った。生成物は、マンノース-グルコースモノマーユニット単位からなる交互オリゴ糖であることが分かった。また、長時間反応してもグルコースやマンノースがほとんど生成しないことから、セルラーゼは、モノマー内部のβ1,4グリコシド結合を切断しないことが示唆された。このことから、セルラーゼの水解反応において、二糖基質の2'位水酸基の配向が重要な役割を果たすと考えられる。
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