本研究は、種々のポルフィリン錯体を高分子化し、その電子遷移に基づく導電性・磁性・光応答性の動的制御を実現しようとするものである。本年度は、秩序配列ポルフィリンオリゴマーのポルフィリンπ軌道間相互作用の制御をめざし、いくつかのポルフィリン多量体の合成と物性評価を行った。まず、center-to-edge型P(V)ポルフィリン多量体の合成とその励起状態の物性について検討し、励起-重項状態において電荷移動を経由する失活過程が顕著に観測されることを明らかにした。また、軸置換基の異なるオリゴマーについて酸化還元特性を調べた結果、アクセプター部位を任意の位置に組み込むことが可能であることが明らかになった。また、それぞれのポルフィリン環の酸化還元電位は、ポルフィリン間の静電的相互作用により僅にシフトするが、そのシフトの大きさには、構造的非対称性に由来する違いが見られることも明らかになった。次に、ピレンを結合したポルフィリン多量体の合成とその励起エネルギー移動について検討した。ピレンとP(V)ポルフィリンのデンドリマー型多量体の光エネルギー捕集では、エネルギーギャップ依存性が現れることが明らかとなった。さらに、メソ位直結型ポルフィリンオリゴマーの合成を行いその物性を検討した。メソ位直結型ポルフィリンダイマーπビラジカルでは、3重項状態の存在を示すESRスペクトルが得られ、これらのオリゴマーがスピン整列に適したものであることが明らかになった。
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