研究概要 |
遺伝子キャリヤーとして用いたのは、温度応答性N-イソプロビルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレートから成る(モル比81:8:11)共重合体である。分子量は83,000である。これをβ-galを含むプラスミドDNAとコンプレックスを37℃で形成させ、cos1細胞に与え、一定時間(1〜5時間)インキュベートした。その後、培地を交換してさらに2日インキュベートしてから、β-galの発現量をを測定した。通常のベクターシステムでは、細胞の培養温度を37℃から下げると細胞の代謝・合成が低下するために導入遺伝子の発現量も減少する。これに対し、このシステムの場合には、冷却することにより遺伝子発現量が増加することをすでに昨年度に見いだしている。これは、温度で遺伝子発現量を制御できた初めての合成遺伝子キャリヤーシステムである。本年度はさらに、以下の結果を得た。 (1)2日間のインキュベーション中で20時間経過した後に3時間だけ20℃に冷却すると、37℃でのみインキュベートした場合より高い遺伝子発現が得られた。このDNA-キャリヤーコンプレックスの相転移点は21℃であり、冷却が25℃で行われると遺伝子発現は上昇しない。また、2日間のインキュベーションの最初に20℃に冷却しても遺伝子発現の増大は見られない。以上の事実から。核内あるいは細胞室内でDNAの放出を促進することで遺伝子発現効率を上げていると推察される。 (2)コンプレックスと細胞の接触時間を1、3、5時間と変えて、その後の2日間のインキュベーションの中で3時間、20℃に冷却することによる遺伝子発現の増加をみたところ、3時間の接触時間のときに最大の8.6倍という大きな増加が得られた。この大きな値は、温度制御により特定の機能タンパクを多く発現することで細胞の機能や分化状態を制御できる可能性を示すのもである。
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