研究概要 |
ラジカル重合は、開始、成長、停止および連鎖移動反応からなる連鎖反応機構を基に、既に体系化され、その成長速度定数(kp)も色々な方法が考案されて報告されているが、同じ条件下でし、測定者により大きな差があり、どれが正しい値か明白ではなかった。IUPACでは、その点に注目し、ワーキンググループを発足させ、正しい速度定数の見積りが進められている。パルスレーザーを用いるPulse-laser-Polymerization(PLP)法が測定法の中心となって進められているが、其の方法にも問題点があり、他の方法が平行に行われる事が望まれていた。 申請者らは、これまで、ラジカル重合系の電子スピン(ESR)共鳴法を用いた研究を行い、色々なビニルモノマーの生長末端の観測に成功し、末端の構造に新たな情報を提供する事ができた。 本研究では、ESR法を用いて、スチレン誘導体、メタクリル酸誘導体のkp値の決定を行い、その再評価をおこなった。メタクリル酸n-ブチルでは、測定温度は-30から90℃で行い、定常状態を確認後、生長速度定数を決定した。その結果を基に、生長速度定数(kp)に対し、kp=(3.40±0.4)x10^6Exp(22.0±1.0)なる関係がある事を明らかにした。さらに、このデータをPulse-laser-Polymerization法によって得られたデータと比較した処、誤差の範囲て良く一致した。本研究結果は、これまで誤差などで問題となっていたESR法が信頼のできる成長速度定数決定手段になる事を裏付けるものである。この研究成果を踏まえて、これまで測定が困難と言われていた塩化ビニルのESR測定とそれを用いた生長速度定数の決定を行った。その結果,室温で、kp=(5800±140)M^<-1>s^<-1>となった.
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