研究概要 |
平成11年度においては,液晶高分子フィルムの成膜法とその配向制御法について検討した。p-ヒドロキシ安息香酸と4-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸からなる液晶高分子をペンタフロロフェノールを用いて溶解し,室温でゲル状態を経由して成膜した結果,共重合組成の異なる5種の試料ともに非晶性の高い透明なフィルムが得られた。いずれの共重合体組成の試料もガラス転移と低温結晶化開始温度間の150℃で延伸することで最も高い伸度が得られ、約600%までの延伸を可能にした。延伸試料はすべて透明であり,溶融成膜法では得られない透明性を実現した。これらの試料を用いて一軸延伸に伴い生じる分子鎖凝集構造の変化,延伸フィルムの熱処理に伴う高次構造変化および共重合体組成が配向構造に及ぼす影響について検討した。その結果,延伸過程で配向結晶化により微結晶が形成され,その結晶配向度は延伸倍率2倍までの初期段階で急激に増加することを見出した。分子鎖全体の配向は延伸に伴い単調に増加する傾向が認められ,剛直鎖においても柔軟鎖の結晶性高分子における延伸挙動と類似していることを明らかにした。以上の結果は剛直鎖の一軸延伸過程の高次構造変化に関して得られた初めての知見であり、液晶高分子の高次構造制御に重要な情報を与えるものである。もう一つの配向制御法として,高磁場を用いた。組成比の異なる試料に溶融状態で3Tの磁場を印加し,その磁場配向性について検討した。いずれの試料も磁場印加方向に分子鎖が配向し,結晶/ネマチック相転移温度より高い温度で急激に生じた。磁化率の高いHNA成分よりHBA成分を多く含む試料の方が高い配向度を示し,磁場配向は溶融状態における凝集構造,熱揺らぎ,溶融粘度などの影響を強く受けることを見出した。以上の知見は磁場による構造制御法,さらに液晶高分子の分子設計に有用な情報を与えるものである。
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