研究概要 |
本研究はサーモトロピック高分子液晶の高次構造制御法について検討した。非線形光学特性を示すp-ヒドロキシ安息香酸(HBA)/4-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸(HNA)共重合体については,溶融成形フィルムでは実現できない透明なフィルムの作製に成功した。HBA/HNA組成比の異なる5種の共重合体のいずれにおいても,ペンタフロロフェノールに溶解して成膜すると,非晶性が高く透明なフィルムが得られた。これらをガラス転移と低温結晶化開始温度間で延伸することにより,600%までの延伸を可能にした。延伸試料でも,溶融成膜法では得られない透明性を実現した。これらのフィルムの延伸過程の高次構造解析を行い,結晶配向度は延伸倍率2倍までの初期段階で急激に増加するが,分子鎖全体の配向は延伸に伴い単調に増加することを明らかにした。次に3Tの高磁場をネマチック状態で印加した結果,異方性磁化率の高いHNA成分よりも,HBA成分を多く含む試料が高い配向度を示し,磁場配向は溶融状態における凝集構造,熱揺らぎ,溶融粘度などの影響を強く受けることを見出した。一方,溶媒キャスト過程(成膜温度25℃)で磁場を印加すると,熱揺動が抑制されてモノマーの磁化率の影響が顕著に現れ,HNA成分の多いフィルムが高い配向度を示した。更に,デンドリマー液晶やカリックスアレン液晶のような特異的な分子構造を持つ液晶材料の構造制御について検討した。デンドリマー液晶はスメクチックA液晶相でメソゲンがガラス基板に対して自発的に垂直配向する性質があることを見出した。また,延伸やせん断では均一に配向させることが難しいデンドリマー液晶やカリックスアレン液晶も磁場を印加することにより比較的容易に配向構造が形成できた。以上の技術は液晶材料の新規な構造制御法であり,高分子液晶の光学特性を支配する分子配向制御として極めて有効な方法である。
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