研究概要 |
本研究では、ヘリカルポリアセチレンの合成法の確立と、その電磁気的および光学的性質を明らかにすることを目的とする。 本年度は、らせん構造を有するキラルネマチック液晶を溶媒とする不斉異方性反応場を構築し、この反応場でアセチレンの重合を行い、高分子鎖およびそれらの束であるフィブリルがらせん構造をもつ高導電性ヘリカルポリアセチレンの合成に初めて成功した。 キラルネマチック液晶は、新規な軸性キラルバイノール誘導体および不斉中心をもつフェニルシクロヘキシル系化合物をキラルドーパントとして、等重量比の二種類のフェニルシクロヘキシル系ネマチック液晶混合物に添加することにより調製した。この不斉異方性反応場でチーグラーナッタ触媒(Ti(O-n-Bu_4)-Et_3Al))を用いてアセチレンを重合した。 円偏光二色性(CD)スペクトルおよび走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、ポリアセチレンの主鎖およびそれらの束であるフィブリルのねじれの向きはキラルネマチック液晶のそれと一致することがわかった。このことは、キラリティーをもたないアセチレン分子でもキラルネマチック液晶反応場で重合することにより、共役系主鎖が規則的にらせんを巻いた液晶分子をガイドに重合が進行し、as-grownでらせん構造をもつポリアセチレンが形成できることを示した。同時に、ヘリカルポリアセチレンのらせん度合いは、キラルドーパントのらせん度合いによって制御できることが明らかになった。合成したヘリカルポリアセチレン薄膜は、ヨウ素ドーピング後1.5-4.3×10^3S/cmと高い電気伝導度を示すのみならず、ヨウ素ドーピング処理や熱異性化後もらせん構造を保たれることがわかった。 このようなヘリカルポリアセチレンは,その高い導電性と特異ならせん構造のため,分子電磁石ともいうべき分子ソレノイドとしての電磁気的性質や,従来のない光学的二次非線形性を有する新規材料になり得ると期待される。
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