平成11年度の結果を受け、次のように研究を展開しかつ以下の結果を得た。 1.本研究では小角X線散乱法を構造解析の主たる測定手段としている。現有の高輝度点収束型小角X線測定装置に入射X線強度の時間的揺らぎが見つかり、構造解析に必要な測定精度でデータを収集することが難しいことがわかった。そのため、入射X線の強度モニターを導入するとともに測定プログラムを再構築した。 2.分岐を有する糖鎖の溶液及びゲル構造:天然高分子であるキシログルカンは分岐構造をもつ、この多糖の溶液中の分子鎖のコンフォメーションとエタノール15%添加時のゲル化挙動を時分割小角X線散乱法で観察した。このゲル構造からの散乱が、デバイービュッケ型を示すことがわかった。 3.ポリスチレンスルフォン化物の溶液構造 (1)ポリスチレンスルフォン酸ナトリウムのアイソタクチック型の立体規則性を有する高分子電解質の溶液構造を小角X線散乱法により検討した。立体規則性を持たないアタクチック型と比較してより剛直な分子鎖コンフォメーションをとること、高分子電解質水溶液の特徴である小角X線散乱に見られる極大が比較的高濃度の添加塩濃度でも観察されることを見出した。 (2)混合溶媒を用いることで溶媒の比誘電率を変化させ、低スルフォン化度のアイオノマーの溶液中でのコンフォメーションを小角X線散乱法で調べた。昨年度、同様な溶液を溶液粘度法で検討し得られた結果を詳細に検討するために行った実験である。両者の結果を比較検討したところ、高分子周りへの溶媒分子の選択的な溶媒和を考慮する必要があることがわかった。
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