日本人海外旅行客の渡航実績、ボーイング・エアバス社の航空機市場予測、内外の新型航空機プロジェクトを調査し、アジア諸都市を結ぶ小型超音速旅客機の可能性を検証した。たとえば、韓国・台湾は超音速飛行には近すぎるのでこれらをのぞいたとしても、ホノルルまでの航続距離を持つ旅客機があれば、日本人海外旅行客の半数以上の渡航先をカバーできる。また、超音速機であれば香港まで約2時間、優に日帰り圏内となり時間に対してプレミアムを払うことをいとわないビジネス客を大いに見込むことができる。そこで、50人乗りと100人乗りの機体の概念設計を行い、運航コストを見積もった。 さらに生物進化を模擬した遺伝的アルゴリズムを用いて超音速旅客機主翼の空カ最適設計を行った。最適化手法として一般的な勾配法と違い、多目的遺伝的アルゴリズムでは様々なトレードオフを持つ解を一度に多数求めることができる。超音速飛行では造波抵抗とソニックブームが新たな抵抗源として加わり、さらに低速の飛行性能との両立という課題もあるため、多目的遺伝的アルゴリズムが大いに役立つ。本研究では、多目的遺伝的アルゴリズムの高度化と、実用問題への応用として線形理論、非粘性CFDコード、ナビエ・ストークスコードと段階を踏んだ最適化を行った。それぞれの流体モデルによる解の特徴を抽出することで、モデル特有の設計指針を見いだした。また、大域的なトレードオフの情報を調べることにより、新しい超音速翼の平面形を提案した。
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