研究概要 |
航空機3次元翼の空力最適化問題は抗力最小化を求める単目的最適化問題である。しかし航空機の主翼設計を行う際には、空力(抗力最小化)、構造(翼重量最小化)、装備(燃料タンク最大化など)等を考慮する必要がある。つまり、より実用的な空力設計を実行するには多目的最適化問題を考える必要がある。また、これらの要素はしばしば互いに相反する要素を持っているので、最適化を行う際には各要素の妥協解を得ることが重要である。 従来、多目的最適化問題の解は、もとの問題を何らかの工夫により単一目的の問題に変換するというスカラー化手法により求められてきた。しかしながら、多目的問題での本質が複数の目的関数間でいかにトレードオフをとるかという点にあるため、スカラー化による単一の最適解を求めても不十分である場合が多い。一方、多目的最適化の解について、「パレート最適」という重要な概念がある。このパレート最適解とは、ある目的関数の値を改善するためには少なくとも1つ他の目的関数の値を改悪せざるを得ない解のことであり、目的関数間のトレードオフに関して最適な解の集合を形成することになる。ここで、複数の個体の発生により多点探索を行うという進化的計算法(Evolutionary Algorithms,EAs)の特徴を考慮すると、目的関数をパレート最適性で評価し、パレート最適解の集合を同時に求めることが可能であることに気付く。申請者らは、効率的な多目的最適化法の研究を進め、領域適応型多目的遺伝的アルゴリズムを開発し、超音速機主翼の多目的最適化に適用した。 また、航空機経済モデルとして直接運航費(DOC)に着目し、計算モデルを構築した。さらに、概念設計におけるサイジングと、主翼平面形の最適化を組み合わせた最適化法を構築し、現在、経済モデルとの結合を試みている。 さらに、航空機市場について調査を進め、アジア諸都市を結ぶ超音速リージョナルジェット機の成立可能性について検討している。
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