本研究では、一般商船においても比較的導入しやすい簡易型航海意思決定システムの開発を目的としている。このシステムの特徴は、ハードウェア構成をできるだけ簡素化する目的で、船体自体を波浪計とみなして波浪情報を得ようとする点にある。研究代表者は本研究開始時にベイズ理論を用いた統計的方向スペクトル推定法を応用し、ある程度の成果を得ていた。そこで、平成11年度においては、 (1)ハードウェアの製作:FOG姿勢計測装置とジャンクションボックスを購入し、一般性を持たせる為に、ノートパソコンのCOMポートからデータを取り込むシステムを製作した。 (2)理論計算法の改良:計算効率の向上を図って、ベイズ推定法アルゴリズムの改良を行った。 (3)アプリケーションソフトウェアの開発:汎用性を考えWindows上で動作するプログラムをVisual C++で開発した。毎正時10分間、サンプリング周期0.5秒で自動計測を行う機能を持つ。 (4)本学附属練習船汐路丸による実船実験:平成11年11月末と12年3月上中旬に3回の実船実験を行い、上述アプリケーションプログラムの修正改良を行った。 これらの成果を踏まえ、平成12年度においては以下のような研究実績をあげることができた。 (1)実船搭載および実用化試験:当初は北太平洋航路就航のコンテナ船に搭載する予定であったが、協力していただいた海運会社の都合で日本・オーストラリア間就航の石炭運搬船に搭載した。約半年の実用化試験の初期において、前年度開発したアプリケーションプログラムに若干の不具合があることが判明し、急遽原因の究明を行い、プログラムの修正・バージョンアップを行った。 (2)実用実験データ収集:上述の実用化試験後半において、自動運転で本システムを数航海にわたって稼動させ、航海中のデータをハードディスクに記録した。毎時10分間の動揺データ計測のみならず、統計的値をまとめたサマリーファイルを自動作成する機能を付加したので、航海の概要が一目瞭然にわかるようになった。 (3)報告書作成:現在印刷中であり、計画通り配布する予定である。 なお、前年度から連続した課題として、ベイズ推定部分の計算アルゴリズムを改良しオンライン化することが考えられる。本システムは現在、北太平洋航路就航のコンテナ船に搭載されており、実用化試験ならびに実用実験データ収集は継続しているので、今後も研究を続ける予定である。
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