近年、固体力学における新分野として、連続体損傷力学と呼ばれる学問分野の進展が著しい。この理論による損傷発展式(損傷・応力関係式)および構成方程式(応力・ひずみ関係式)を非線形構造解析に援用することにより、塑性変形、座屈、損傷発生、破壊に至るプロセスを一貫して解析し得る可能性がある。本研究では、船舶・海洋工学分野における様々な固体・構造強度問題に対し、連続体損傷力学を援用した非線形構造解析法を確立するための基礎研究を行ない、船体、海洋構造物などのより合理的な解析強度評価手法の確立に寄与することを目的とする。 本年度はまず、一般的な延性材料を対象とし、連続体損傷力学の手法を用いて、熱荷重、静的ひずみ下において弾性状態から破壊に至るまで適用可能な構成関係のモデル化を行なった。続いて、誘導した構成方程式を、増分理論に基づく有限要素解析に導入するための計算アルゴリズムを検討し、2次元および3次元有限要素解析パイロットプログラムを作成した。さらに、有限要素パイロットプログラムによる鋼構造部材の熱弾塑性損傷問題の試計算を行ない、実験結果などとの比較により、誘導された構成関係の妥当性を確認するとともに、計算アルゴリズムの有効性、実用性を検証した。これらの計算作業には、本申請で購入したエンジニアリング・ワークステーション一式を使用した。
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