海上に流出した難揮発性の油は波にもまれると水を取り込み、油中水滴型のエマルションになり高粘度化する。高粘度化したエマルションの回収は、高い圧力損失の発生や管路の閉塞が起きるため、通常の機材では困難である。本研究では原油の輸送で行われているCAF(Core Annular Flow)法の適用を検討した。CAF法とは管壁側に水の層、中央に高粘度の油を配した輸送方法である。以下に研究結果の概要を示す。 1)エマルションの粘度 C重油を用いて含水率を変えた粘度測定を行い、エマルションの粘度は含水率が0.75で元の油の数百倍に達することを明らかにし、エマルションの粘度と含水率および温度の関係を求める計算式を作成した。 2)圧力損失 3種の管径による流送送実験より、CAFの圧力損失はいずれも水のみの圧力損失を僅かに上回る程度になる事が明らかになった。 3)高さ関数による計算 CAFが平行平板間を流れる乱流と仮定し、k-εモデルおよび油水の界面を表す高さ関数を導入した計算を行った結果、界面の変動が比較的少ない場合にはCAFの圧力損失は水を僅かに上回る程度になる事が確認できた。しかし流速が速い場合や油の粘度が低い場合には界面の変動が大きくなり、高さ関数を用いた計算では対応出来ない事が判明した。 4)改良VOF法による計算 界面を斜線で分離する改良VOF法による計算を行った。計算精度の検証のために行った切欠き円盤の回転問題では良好な結果が得られた。この方法を用いることで粘度、流速を変えた油コアの圧力損失の計算や分離と合体が起きる複雑な油コアの計算が可能になった。 5)回収装置 一連の実験と計算結果を基に、企業と共同して吸い込み口にCAFの発生装置を付けた高粘度油に対応出来る回収機を開発した。
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