研究概要 |
本研究は,坑井の掘削時に発生する弾性波を音源として利用し,掘削と同時にビット近傍の速度構造を推定する技術に関するものである。本年度の研究成果は以下の通りである。 (1)掘削音の解析による速度構造情報抽出法の検討 - 坑井内3軸1点計測した掘削音の3次元粒子運動軌跡を時間-周波数領域で解析することにより,速度構造情報を抽出する方法を検討した。シミュレーションにより本方法の性能を評価した結果,3次元粒子運動軌跡の偏波方向に着目して解析を行なうことにより,実用的な精度で速度構造情報を抽出できることを明らかにした。 (2)速度構造推定法の検討 - 掘削にともない連続的に記録される掘削音を用いて,その偏波方向解析を行なうことにより,ビット近傍の速度構造を逐次的に推定する方法を検討した。ここでは,水平層構造モデルおよび,放射状モデルについて,偏波解析に基づくモデル同定法を検討した。シミュレーションにより本方法の性能を評価した結果,水平層構造については比較的高い信頼性で速度構造を同定できることを明らかにした。 (3)実データの解析による性能評価 - フランス,ソルツHDRフィールドで記録された掘削音を解析し,速度構造を推定可能であることを実証するとともに,本手法の問題点,特に雑音の影響について明らかにし,研究課題(1),(2)ヘフィードバックした。 (4)坑井掘削音計測実験 - 秋田県雄勝地域で坑井掘削音計測実験を実施した。電力中央研究所雄勝HDRフィールドにおいて高感度坑井内3軸AEゾンデを用いて掘削音を検出し,それを記録した。本データについて,周波数特性,偏波方向等に着目し,基礎的な解析を行い,本信号の品質を評価した。
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