本研究は、地下深部の構造の分解能向上をめざすために、ホログラフィックイメージング法の低周波電磁探査への適用性を検討することを目的として行われている。本年度は、まず、拡散性をもつ導体内の低周波電磁場を仮想波動場に変換して、波動場として扱えるようにする方法について検討した。その結果、この方法では時間分解能は向上する可能性があるが、位相の遅延情報は欠落してしまう可能性があることがわかった。地下構造を求める際に多くの情報を用いて精度を上げた方がいいのか、一部情報が欠落しても時間分解能を上げた方が精度が高まるのかについては、なお検討を要する。また、このような解析法を具体的に適用性を検討するためには、電磁ノイズや地質ノイズを含まない良質の実データを用意する必要がある。そこで、比較的単純な地下構造上で、理想的な送受信機配列で測定を行ったアメリカ・デキシーバレー地域の探査で取得された時間領域電磁探査データを用いることとし、そのデータの品質向上のため、セレクティブスタッキング法や磁力計の特性および送信線のカップリングの影響を除去するためのデコンボリューション処理法を適用して、今後の解析に耐えるようなデータセットを作成した。本年度の段階では、このデータセットを用いて、層構造を仮定した比抵抗構造イメージングを行った。その結果。得られた比抵抗構造は、概ね層構造を示し、各地層の境界深度については、既存の反射法地震探査結果や重力探査結果と比較したところ、よく対応することがわかった。
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