研究概要 |
四倍体コムギのWaxy遺伝子の構造解析を行った. 六倍体コムギのWaxy遺伝子成立に関与した四倍体コムギのWaxy遺伝子の構造を明らかにするために,四倍体コムギの野生種(T.turgidum spp.dicocoides)と栽培種(T.turgidum spp.durum)が持つ2種類のWaxy遺伝子の開始コドンから終止コドンまでのゲノム塩基配列を決定し,六倍体コムギのWaxy遺伝子との相同性の比較を行った.六倍体コムギのWx-7A遺伝子と最も高い相同性を示した野生種と栽培種の遺伝子をそれぞれWx-A^<EW>,Wx-A^<Ec>とし,Wx-4Aと最も高い相同性を示した遺伝子をそれぞれWx-B^<Ew>,Wx-B^<Ec>とした.これらの四倍体コムギのWaxy遺伝子は六倍体コムギと同様に,それぞれトランジットペプチドをコードする領域を持ち,11個のエクソンと10個のイントロンから構成されていた.塩基配列の相同性は,イントロン領域では74.5〜99.4%,トランジットペプチド領域では88.7〜97.6%,成熟型Waxyタンパクをコードする領域では95.9〜99.8%と高いことがわかった.またWx-A^<EW>とWx-A^<Ec>間,Wx-B^<Ew>とWx-B^<Ec>間の相同性はすべての領域できわめて高い相同性を保持していた.Waxyタンパクをコードする領域の変異はすべて塩基置換によるものであったが,Wx-B^<Ew>のトランジットペプチドをコードする領域には六倍体コムギのWx-4Aと同様に3塩基の挿入配列が存在した.さらに六倍体コムギのA,Bゲノムに座乗するWaxy遺伝子は四倍体コムギの栽培種より野生種のA,Bゲノムに座乗するWaxy遺伝子と高い塩基配列の相同性を示した.このことから六倍体コムギのA,Bゲノムに座乗するWaxy遺伝子は初期の四倍体栽培種であるT.dicoccumの遺伝子から進化したと推察された.
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