研究概要 |
実験室内のin-vitroの条件下で生産したバレイショの小塊茎(生重約1g,以下MT)を種イモに用いて圃場に栽培した場合に、通常の塊茎(生重約50g,以下CT)を種イモに用いた場合とほぼ同程度の収量が得られる理由を明らかにする目的で、早晩性の異なるバレイショ3品種(男爵薯,キタアカリ,農林1号)について,MTはCTの乾物生産過程を北海道大学農学部附属農場の圃場で調査した.結果の概要は下記の通りである. 1.MTはCTとほぼ同時期に萌芽し,また葉面積の増加は遅かったがほぼ同時期に塊茎形成を開始した. 2.塊茎形成期以降では,MTはCTに比べ塊茎の肥大速度が小さく,また根重の増加速度も小さかった.一方,葉面積の増加速度はMTの方が大きく,開花始めにはMTとCTがほぼ同じ葉面積になり,また同時期に地上部最大期をむかえた. 3.地上部最大期以降では,MTはCTと同程度の塊茎重の増加速度および光合成速度を示したが,葉の枯れ上がりがCTに比べ約10日ほど早く,収量は約30%少なかった. 4.MTとCTとの生育および収量の差異は品種によって異なり,男爵薯では大きく,農林1号とキタアカリでは小さかった. 以上のことから,MTとCTは塊茎形成に関係する日長反応性の差異は極く小さいものの,同化産物の地上部と地下部への分配特性が異なり,MTはCTに比べ地上部生長が優先されるものと推察した.また,MTはCTに比べ葉面積に対する根重の割合が低いため,本年度のような高温年次には乾燥ストレスを強く受けることが示唆された.しかし,MTとCTは種イモの重さが極端に異なるにも関わらず、開花始め以降の乾物生産および収穫期の収量での差異は比較的小さいものと考えられた.
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