研究概要 |
アズキにおける種子の形態と吸水との関係を明らかにするため実験を行い,次の成果を得た. 1.アズキおよび近縁種を用いて種子の吸水試験を行ったところ,ツルアズキ(Vigna umbellata)とリョクトウ(V.radiata)はアズキ(V.angularis)よりも吸水が速く,ケツルアズキ(V.mungo)とヤブツルアズキ(V.angularis var.nipponensis)では33-56%の硬実が生じた.しかしながら,すべての種において臍の一端に位置する種瘤を封鎖するとほとんど吸水しなかったことから,最初の吸水部位はいずれも種瘤であることがわかった. 2.外国産を含む91の品種・系統を供試した吸水実験によると,浸水4時間までの吸水速度には大きな差異がみられた(2〜82%).これらの差異は時間とともに小さくなるが,36時間後の吸水率は種子水分,粒大および熟期との間に正の相関が認められた(それぞれr=0.456***,0.368***,0.598***). 3.アズキ品種エリモショウズを用いて,開花後からほぼ3日ごとに種瘤の発育形態を観察した.種瘤は開花6日目には完成時の約1/2の大きさに達し,9日目には90%の大きさになった.種瘤の柵状層下にはリグニン様物質を含む柔細胞があり,表面中央には条(縫線)が観察された. 4.成熟期に収穫したエリモショウズを手および小型脱穀機で操作時間を変えて脱粒し,得られた種子について吸水試験を行い,同時に走査型電顕により種瘤の表面構造を観察した.その結果,種子に対する機械的な衝撃が強いほど吸水が速く,その程度は縫線の分離の度合いと密接に関係することが示された.すなわち,アズキ(近縁種を含めて)種子の吸水が種瘤縫線の密着程度によって制御されていることが明らかになった.
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