研究概要 |
本研究では、水稲の安定多収を維持しながらも外部環境に及ぼす負荷を極力少なくする栽培技術の確立を目指した。24年間豚糞堆肥を連続施用している水田で栽培したコシヒカリでは、慣行栽培(化学肥料)と比較して根系生育が旺盛であった。有機資材の連用により、土壌の物理化学性が改善され根の生育が促進されたものと考えられる。根の生理活性を示す指標として根系からの溢泌液量、根からのRb吸収量および溢泌液中のサイトカイニン(t-ZR)含量をELIZA法で測定した。1株あたりの溢泌液量と茎数および地上部乾重との間には正の相関関係(r=0.75,r=0.79)が認められた。有機栽培コシヒカリ(豚糞堆肥、カルス菌を用いて発酵させたボカシ有機堆肥)の1株あたりのRb吸収量は、株間および株直下20cmの位置で稲ワラ施用区より大きかった。不耕起移植栽培コシヒカリでは、株直下20cmでのRb吸収量が耕起区より大きく、根系の発達と根の活性の高さが推定された。土中打ち込み点播(直播)コシヒカリでは、株間の表層および株直下でRb吸収が多く根の活力は高いと考えられた。7月8日におけるサイトカイニン含量は、豚糞堆肥区で0.52pM/mlであり化学肥料区(0.8pM/ml)より低く、有機栽培によるサイトカイニン含量の増加はなかった。伊那市の多収穫コシヒカリ(823kg/10a)では、株間の表層に分布する根量が極めて多く、他の調査区の2倍以上であった。多肥施用と土壌の通気性の良さ(気相は20%以上)が、根系生育に大きく影響していると考えられるが、溢泌液中のサイトカイニン含量が1.6pM/mlと高く、根の活性も高いと考えられた。三井化学(株)育成のF1多収品種(MH2001,MH2003)を材料に用いて、LP肥料を施用した乾田不耕起栽培を行い多収性と根系生育の関係を検討した。出穂期における押し倒し抵抗値は高く倒伏耐性に優れており、根系もよく発達していた。LP肥料の環境効果と収量への貢献が期待される。
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