一定期間中に発生した新根のみをサンプリングする手法により圃場栽培された水稲について、新根発生の経時的推移をコシヒカリについて調査した。その結果、新根発生パターンは栽培条件によって異なった。特に多収栽培のコシヒカリでは、一般栽培のコシヒカリに比べて新根発生量が多かったが、幼穂形成中期には新根発生速度が低下していた。このことは多収栽培コシヒカリで穂数が多いにもかかわらず、一穂籾数が多く、総籾数が多いことの要因とみられる。すなわち、幼穂分化中期に新根発生への乾物分配を低下させ、その分を幼穂の発達などに回していると考えられ、根への最適投資前略を解明する上で重要な知見とみられる。 一方、根の活性については、根の呼吸速度での評価を行った。水稲において、根の乾物率と根の呼吸速度とが負の相関関係を示すことを既に明らかにしていたが、本年度の調査では、新根のみを採取した場合でも、根の乾物率と根の呼吸速度との間に負の相関関係が認められた。本研究で採用している新根サンプリング方法は容易であり、根を傷めることも少ないので、この新根サンプリング方法と根乾物率による根活性の評価方法とを組合わせることにより、根の活性の評価が従来より簡便に行なえるようになると期待できる。次年度以降は、新根のサンプリングのみでなく、全根のサンプリングも同時に行なって、根系全体の量的拡大ならびに活性の推移の両者を簡便に把握する手法の確立を目指す予定である。なお、普通ソバについても、根乾物率と根呼吸速度が負の相関を示す結果が一部得られたが、データが不十分なため、来年度再確認ならびに、水稲と同様に、根系全体の量的拡大ならびに活性の推移の両者を簡便に把握する方法の確率を目指す。
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