過去の調査では多収栽培田は一般栽培田に比べて積算新根発生量が多かったが、本年は一般栽培田の方が多かった。しかし、多収栽培田で幼穂形成期中期頃に新根発生速度が一般栽培田より低い特徴は本年も認められた。原因として、中干しの影響が推察された。一茎あたり新根増加速度は出穂期まで多収栽培田が一般栽培田を下回ったが、登熟期には逆転した。一方、全根乾物重は幼穂形成期に一般栽培田が多収栽培田を若干上回った以外、多収栽培田が一般栽培田を上回った。多収栽培田では全根乾物重は穂首分化期が最大で、幼穂形成期には低下し、その後ほぼ一定で推移した。これに対し、一般栽培田では、全根乾物重は幼穂形成期まで増加して最大となり、出穂期に低下した後ほぼ一定で推移した。一茎あたり全根乾物重は、幼穂形成期に多収栽培田で一般栽培田を下回った以外は多収栽培田が高く推移した。根乾物率と根呼吸速度との負の相関関係は従来同様に認められた。以上から、多収栽培田の登熟の良さには、登熟期間の一茎あたり新根および全根の乾物重の多さが関与していると推察された。また、両水田の根の老化・枯死の仕方にも違いがあると推察され、次年度のデータを総合して検討したい。普通ソバは水稲に比べて根が非常に細いため、通常のコアサンプリング方では根を傷めずに効率的に回収することが容易ではないが、イソライトを用いる方法では比較的容易に新根の採取が可能であることとが確かめられた。供試品種の信濃1号では根系拡大は播種後約1月の開花始め頃にほぼ終了し、その後は老化・枯死が優先した。また、根量(根重)の推定方法として、茎基部断面積が有効であることを認めた。根乾物率と根呼吸速度との関係については、根のサンプル量が少なかったこともあり、充分なデータが得られなかった。
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