水稲品種コシヒカリを供試し、乾田直播栽培と移植栽培との比較実験、およびフィリピンで栽培された熱帯イネの直播栽培と移植栽培について得られたデータの解析を行った。本年はデータ解析を容易にするため、乾田直播栽培と移植栽培のいずれでも根のサンプリングは株間で行った。 1)コシヒカリの根系生長の動態の解析 全根乾物重(根の現存量)のピークは直播では出穂後、移植では幼穂形成期ころであった。一方、新根の乾物重増加速度のピークは両区ともに幼穂形成期ころであった。両区の根の枯死率を比較すると、直播では移植に比べて生育後半の枯死率が低く推移していた。一方、新根率の推移には両区で差がみられなかった。したがって、移植では新根の発生後枯死までの期間が短く、新旧の根の入れ替わりが比較的激しかったのに対し、直播では新根の寿命が比較的長く、全根乾物重のピークが遅れたものと考えられた。 2)熱帯イネの根系生長の動態の解析 新根乾物重増加速度のピークは水田での移植栽培では幼穂形成期ころ、畑地での直播栽培では幼穂形成前であった。畑地での直播では陸稲品種の新根乾物重増加速度は水田での水稲の移植栽培の場合を上回った。また、根の枯死量および根の枯死率は、特別なものを除けば、それぞれ90-160gm^<-2>および53-78%であった。 3)根の呼吸速度の簡易推定 根の呼吸速度の簡便な推定法として、根の乾物率を根の呼吸活性の指標とする方法についてさらにデータの蓄積を行い、コシヒカリについては、直播栽培および移植栽培のいずれの条件でも、根の乾物率が根の呼吸活性の簡便な評価指標になることを確認した。また、同様に、熱帯イネについても水田での移植栽培および畑地での直播栽培のいずれの条件でも根の乾物率が根の呼吸活性の簡便な評価指標になることを確認し、根の呼吸速度の簡便な評価指標としての根の乾物率の適用範囲は広いことを明らかにした。
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