研究概要 |
広葉樹を炭化する際、発生する煙を冷却・液化すると、木酢液が得られる。この木酢液は作物の根を活性化させ、作物の生育を促進することが、また果菜類においては果実の品質を向上させることが知られている。さらに、木酢液は作物の病原微生物の生育に影響をもつことも示唆されている。 本研究は木酢液成分の分離・同定を行うとともに、木酢液ならびに同定された木酢液成分が病原性微生物(細菌及び糸状菌)の生育に及ぼす影響を検討するものである。 1.木酢液成分がイネいもち病(Piricularia oryzae)の生育に及ぼす影響:いもち病の生育に関する実験は細菌同様寒天平板希釈法を用いて行った。すなわち、寒天培地(nutrient agar)に木酢液成分の倍々希釈系列を加えた寒天平板培地にいもち病菌を接種し、菌糸の生長直径(コロニーの直径)を測定し、対照区に対する割合を求め木酢液成分の活性とした。暖地の広葉樹から得られた木酢液には37種の化合物が同定されているが、これまでの実験で比較的糸状菌の生育に対して阻害程度の高かった12種の化合物を供試した。木酢液同様、木酢液成分も病原糸状菌の生育を阻害した。特に、キシレノール類、クレゾール類および4-エチールフェノールはいもち病菌の生育を阻害した。 2.木酢液の散布処理がいもち病の発生に及ぼす影響:実験は室内の陽光定温器(25℃、照度4,000ルクス)内で行った。供試品種としてコシヒカリを用い、500mlのビーカに焼土を入れ、催芽種子を播種した。2.5葉時にいもち病菌を噴霧接種した。木酢液処理はいもち病接種前後に行った。調査は木酢液散布前後7日に病斑を調査した。木酢液の濃度が高い場合、病斑は減少した。これらのことから、木酢液は利用法によってはイネいもち病の発生を抑制する可能性のあることが示唆された。
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