研究概要 |
北方地域の景観資源植物として有望な春植物のうち、札幌市周辺にも比較的多く見られるキバナノアマナとカタクリを取り上げ、その種子発芽特性を調査した。 採取直後のキバナアマナの種子は、15,20,25℃の恒温または25/15℃の変温条件下では90日を経ても全く発芽しなかった。25,10℃の恒温または15/5,20/10℃の比較的低温条件下では、45日目頃から発芽を開始し、10℃では90日目に30%程度発芽した。乾燥3℃または25℃で貯蔵した後に播種した場合、やはり15,20,25℃の恒温または25/15℃の変温条件下では全く発芽せず、10℃で40-50%発芽した。湿潤3℃で3ヶ月間貯蔵した後での播種実験では、10℃で播種後5日目に発芽し始め、90日目には50%が発芽した。その他の発芽温度区では10%程度発芽した。ところが湿潤25℃で3ヶ月貯蔵すると、10,15℃で25日目から発芽し、40日目には95%以上発芽した。5℃、20/10℃でも良好に発芽し90日目には90%以上の発芽率を示した。20,25,25/15℃の高温条件下では発芽しなかった。 カタクリの種子を6月8日に採取して、6月16日に10,15,20,25,15/5,20/10,25/15℃の温度条件下に播種した。その結果いずれの温度条件下でも10月下旬まで発芽せず、11月中旬になって10℃の温度区のみで発芽が認められて翌年の1月中旬には約70%発芽した。しかし25/15℃の高温を3〜4ヶ月間与えた後に5℃条件下に置くと速やかに発芽を開始し、1ヵ月後には95%以上発芽した。 本年度の実験によってキバナノアマナとカタクリ種子の発芽に要求される温度条件をほぼ把握できた。来年度は、さらに詳細に温度と発芽の関係、温度と胚の成長過程を調べるとともに、野外の自然条件下での発芽との関わりを明らかにする。
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