本研究では、1960年代から大都市圏における住宅の大量供給を目的として公的機関によって開発された大規摸な集合住宅地において、30年余の時間をかけて育成管理された緑の環境ストックを、建て替え事業のプロセスにおいてどのように保全するかについて、そのモデルを構築するための基礎的条件と課題を明らかにすることを目的として実施したものである。 1.1960年代に建設された首都圏の集合住宅地において、緑の環境ストックの形成状況を把握し、現在までの変容の過程をあきらかにした。 2.首都圏を中心に開発された集合住宅地のうち一定規模以上の開発面積を有する事例について、竣工時の植栽計画図から緑のイニシャルストックと現在までの植物の成長量を把握し、緑の環境ストック形成のプロセスを明らかにした。 3.緑の環境ストック形成のプロセスにおける主体(主として居住者ならびに事業者としての住宅・都市整備公団)の側の活動をフォローし、建て替え事業における緑の環境保全に関与する諸条件をあきからかにした。 4.建て替え事業が計画段階もしくが建設段階にある4カ所(武蔵野緑町、草加松原、多摩平、高根台)の集合住宅地を対象として、建築計画と造園計画における緑の環境ストックに関する方針と実績を検証した。 5.4においてケーススタディとした集合住宅地を対象として、緑の環境ストックの保全を優先させた場合に想定しうる建て替えモデルプランを立案し、代替案として比較検討を行うとともに、実現にむけての課題を抽出した。 今回の研究では首都圏における事例のみを対象としたが、居住に関する習慣の異なる近畿地方における事例検討を重ねる必要があるものと思われる。
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