研究概要 |
イチゴ果実における糖の蓄積機構を明らかにするため、糖代謝関連酵素の一つであるインベルターゼに着目して、スクロース蓄積型品種'麗紅'と、グルコースおよびフルクトース蓄積型品種'とよのか'を用いて、インベルターゼ遺伝子の単離・解析を行った。また,葉片培養におけるシュート形成条件を検討した. 1.'麗紅'のからのインベルターゼ遺伝子断片は増幅できなかったが,'とよのか'では2種類の遺伝子断片(液胞遊離型inv1および細胞壁結合型inv2)が単離された。両者間の相同性は55.9%と低くかった.さらに、PCR-サザンハイブリダイゼイション法を用いて,野生種および栽培種間の相違を検討したところ,野生種と栽培種間,栽培品種間での相違は認められなかった. 2.インベルターゼ遺伝子の導入において,組織からの植物体の再生が必要となるので,葉片培養におけるシュート形成条件を検討した.その結果,'麗紅'および'女峰'において,2,4D0.2mg/lとTDZ2mg/lを添加した1/2MS培地を用い,葉片置床後暗条件(25℃)で培養した処理区のシュート形成率が最も高く,両品種とも60%以上であった.一方,'とよのか'はカルス形成するが,シュート形成率は著しく低く,最も高い処理区のそれは5%であった. したがって,本実験では,果実内での糖蓄積の品種間差異はインベルターゼ遺伝子の相違よりも他の領域(プロモータ領域など)の相違が関係していると考えられた.また,'麗紅'および'女峰'の葉片からのシュート形成条件を確立した.
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